ブラギの塔にて(未完)

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 ブラギ神の血を引く者に、真実のすべてを見せるといわれるブラギの塔。その最上階で、ひとりの青年が祈っていた。エッダ家の当主、クロード神父である。
「ブラギ神よ、わたしに隠されし真実をお示しください。クルト殿下を暗殺したのは何者なのでしょうか? 殿下暗殺のかげに隠されし真実のすべてを、どうかわたしにお見せください」
 祈りに応えて、クロードの目の前に、ひとつの光景が浮かび上がった。
 斧をふりかざした男たちが、クルト王子とバイロン卿の一行に襲いかかる光景。ティルフィングを手に善戦していたバイロン卿が、クルト王子をかばおうとして足をすべらせ、崖から転落する光景。そして、クルト王子と従者数名が、惨殺される光景− 。
 暗殺者たちの得物と武具からして、彼らがランゴバルド卿の手の者であることはまずまちがいない。
 次いで場面が転換した。ランゴバルド卿が暗殺者たちにクルト王子の殺害を命じている場面である。
 やはりそうだったかと、クロードは思った。
 クルト王子に重用されているバイロン卿が、王子を殺すはずがない。王子を殺す動機のある者といえば、クルト王子の率いる遠征軍に滅ぼされたイザーク王国の者か、でなければ、反王子派のランゴバルド卿かレプトール卿だろう。
 だが、場面はそれだけでは終わらなかった。さらに暗転して、アルヴィス卿が、クルト王子を暗殺するよう、レプトールとランゴバルドをそそのかしている場面が映されたのである。
(アルヴィス卿が? どうして?)
 それは、クロードには予想外の事実だった。
 アルヴィスは、何を考えているのかよくわからないようなところはあったが、レプトールやランゴバルドと違って、私利私欲に走る性質でないことは確かだった。ヴェルトマーの領地における彼の公正な統治は、王も王子も、クロード自身も高く評価していた。
 その彼が、どうしてレプトールやランゴバルドの悪事に加担しているのか? いや、加担どころではない。目の前に映し出される光景は、アルヴィスこそがクルト王子殺害の首謀者であることを物語っている。
 驚いているクロードの目の前で、場面はさらに、過去へ過去へとさかのぼっていく。
 アルヴィスを脅迫する暗黒教団の魔道師。七歳のアルヴィスを襲った悲劇。そして彼の母シギュンの出自と、彼女が背負わされていた運命……。
(なんてことだ。ひとこと相談してくださっていれば……)
 ロプトの血を引く者は根絶やしにすべしという教えを、クロードとて知らないわけではないが、いくらなんでも、ただそれだけの理由で、近衛長官として王国に貢献している何の罪もない人間を、火あぶりにして殺そうとは、王も王子も考えはしないだろう。
 そう考えてから、クロードは自信がなくなった。
 かつて皇族マイラは、人々の苦況を救おうとして、反乱を起こした。だれもが知っている事実でありながら、ロプト帝国が崩壊したあと、彼を待っていた運命はどうだったか。
 マイラはロプトの血を断つために、妻子とともに命を断ったと伝えられているが、それは信じがたい気がする。おそらく彼は、妻子とともに殺されたか、でなければ自害に追いやられたのだ。ロプトの血を断とうと考えた人々の手によって。
 アルヴィスはそのマイラのただひとり生き延びた娘の子孫なのだ。王や王子を信じられなかったとしても、無理もないかもしれない。
 そして、王と王子は、アルヴィスがロプトの血を引くと知っても、ほんとうに彼を受け入れただろうか? かつて人々がマイラに対して行なったのと同じことをしたのではないのか?


だいぶん昔に書きかけて、忘れていた話です。
いちおう何を書こうとしていたかはぼんやり覚えています。
なぜ、クロードはアルヴィスの裏切りを予期しながら黙っていたかという話です。
続きを読みたいという物好きな方はゲストブックにリクエストをどうぞ。
ひょっとすると書く気を起こすかもしれません。


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