あなたはチェイニーに頼みました。
「金髪の人を紹介してください」
それは、ひょっとしてあのジョルジュではないかと思い、あなたはわくわくしています。
チェイニーについていくと、一軒の酒場軒宿屋に入っていきます。わりと値段が高めの店です。
「いまは旅のとちゅうで、ここに泊まっているんだ」
これはますますジョルジュに違いありません。ジョルジュなら、アカネイア貴族なのですから、高めの宿に泊まるでしょう。
「……あ、いた」
チェイニーの視線の先を見ると、いすの背もたれから金髪がのぞいています。窓から差し込む陽の光を反射してきらきら光るきれいな髪です。
「おーい、シリウス」
あなたはがっかりしてコケそうになりました。ふり向いたのは、変な仮面をつけた人でした。
「あんたに彼女を紹介しようと思ってさ。いいかげんで身をかためたら?」
シリウスは無言です。
「彼女をどう思う? 好みじゃないとか?」
「とんでもない」と、シリウスが答えました。
「とても魅力的な女性だと思う」
心なしか、顔が少し赤くなっています。あなたは、「ちょっといいかも」という気になってきました。
そうです。シリウスと思わなければいいのです。あの天下の名将カミュだと思えばいいのです。たしかにカミュ本人なのですから。
そこで、あなたはしばらくカミュとともに過ごし、彼がバレンシア大陸に帰るときには同行しました。
バレンシア大陸のカミュの家には、ニーナとティータがいました。
「まあ、カミュ。あなたはまた女性をつくったの?」
そうでした。彼には恋人がいたのでしたね。それもふたりも。どうやら、近寄ってくる女性は拒めず、みんな恋人にしてしまうという男性だったようです。
カミュはもごもごし、女三人の視線が痛かったのか、翌日にはいなくなってしまいました。
「まったく困った人だこと。でも、わたしたちのことは気にしているみたいで、お金はきちんともってきてくれるの。だから、生活には困らないわ。そんな暮らしでよかったら、あなたもここで暮らしなさいな」
あなたは、ライバルたちにいびられるのではないかとビビっていましたので、そう言われて、ちょっとホッとしました。なんだか複雑な気分ですが、見知らぬ大陸で就職口を探すのもたいへんそうです。生活費に困らないのなら、女三人の暮らしも悪くはないかもしれません。
そこで、あなたはニーナとティータといっしょに暮らすことにしました。
カミュ、いえジークは、この大陸の王のもとでせっせと働き、月に一回、給料をもってきてくれます。そのときには、女三人でちょっとした彼のとりあいになりますが、それはゲームみたいなもので、本気でケンカをするわけではありません。
でも、ジークにはちょっとつらいみたいで、一晩か二晩泊まって、そそくさと去っていきます。ときおり、ジークは、何ヶ月も帰ってこないことがあります。そういう場合にそなえての蓄えはあるし、ニーナとティータはシスターの仕事、あなたはその手伝いをしているので、暮らしには困りません。
「あの人はまた、どこかの大陸で戦争に巻き込まれているのでしょう。また女を連れてきたりしてね」
そう言って、女三人で笑っています。そうして、あなたは彼女たちとともに、おだやかな生涯を送ったのでした。(終わり)