吟遊詩人の日記−禁断の秘歌(エピローグ・その1)

立川が書いたファンタジー小説「聖玉の王」シリーズの世界が舞台の連載小説です。

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 2022年4月2日UP


  ハウカダル共通暦324年先見の月7日  

 久しぶりにシグトゥーナの都に戻って、今日で三日目。昨日は王宮に伺候して陛下に謁見したあと、音楽学校に顔を出して忙しかったから、今日は昼過ぎまで宿でのんびりし、遅めの昼食をとってから、広場で仕事をしていた。
 集まってきたお客さんたちの求めに応じて三曲ほど歌ったとき、騎士たちの一隊が出陣していくのが見えた。
 きのう王宮でそんな話はまったく耳にしなかったから、予定になかった突然の出陣なのだろう。騎士と歩兵を合わせて百人ぐらいか。本格的な戦争ではなさそうだ。
 何があったのか? 相手が盗賊団の類にしては兵数が多いという気がするが。他国と国境を接する辺境地域での小競り合いか? それともどこかで内乱が起こったか?
 戦争や内乱鎮圧にしては出陣する兵が少ないが、これは斥候を兼ねた先発部隊で、あとから後発の軍を出すとか、途中で合流するということもあり得る。
 何が起こったのかを知り、あとで歌にして皆に伝えるためにも、ついていきたいところだが、吟遊詩人が軍隊に同行できるのは、先方から声がかかったときに限られる。それが軍隊の邪魔をしないための不文律の決まりごとだ。
 とくにいまは、俺の歌を聴こうと集まってくれた人たちが待っている。いまは軍隊を見送り、あとで、何が起こったかの情報を集めるしかない。
 その情報はなかなかわからなかった。街の人々は誰も何も知らず、城門を守る兵士たちは口が堅く、何があったのかようやくわかったのは、夕暮れ近くになって軍隊が戻ってきたときだった。
 シグトゥーナからさほど遠くない森の中に、魔族たちの隠れ里が見つかって、その討伐に出陣していたのだという。
 ほとんど一方的な殺戮だったようで、軍隊の死傷者は少ない。討ち取った敵の首は城壁の外にさらしているという。
 わかっていたら、不文律の決まりごとなんて無視したのに。軍隊の後をつけたのに。
 バルドは北に行くと言っていた。人間の領域の外に行くと言っていた。だから、シグトゥーナの近くにいたはずはないと思うのだけど。
 でも、あのあと、どこにもいないと思っていた同胞たちに出会っていたとしたら? 予定を変えて、その魔族の隠れ里というのに身を寄せていたとしたら?
 討伐された魔族たちの中にバルドはいなかったのか?
 城門の外に出ようとしたけれど、軍隊が入ると同時に門は閉ざされ、外に出ることはできなかった。


  ハウカダル共通暦324年先見の月8日  

 今日も軍隊が朝から出動していった。同行が許されないばかりか、城門は閉ざされて兵士が見張りにつき、通行禁止となっている。出してほしいと何度も頼んでは拒まれたり、強硬に出ようとして連れ戻されたりしているうちに夕方となり、軍隊が戻ってきた。
 門番が軍隊の対応に気を取られている隙に門を出ようとしたが、兵士たちに連れ戻された。
「歌のネタ探しなら、もっと安全になってからにしろ」
「そうだ。まだ魔族の残党がうろついてるんだ。現に、外に出ていた子供が刺された」
 そう言った兵士を振り返って驚いた。その兵士がマントにくるんで抱きかかえていた少年に見覚えがあったからだ。
「レイヴ!」
「知り合いなのか?」
 頷くと、身内に連絡が取れるかと訊ねられた。
「あ、いや、身内は……知らない。ふとしたことで出会った顔見知りだけど、身元とかはよく知らないんだ」
 貧民窟に住む子供だということは伏せておいたほうがいいと思い、言葉を濁した。身内はいないだろうと思うが、はっきり聞いたわけではないので、知らないというのはあながち嘘ではない。
「そうか。それなら、とりあえず俺の家に連れていって手当をしよう。女房がいることだし」
「お願いします。あの、もし、俺にできることがあったら……」
「ではついてきてくれ。手伝ってもらうことがあるだろうし」
 それで、その兵士の家までついていき、彼が医者を呼びに行っている間に、奥さんの指示でお湯を沸かしたり、泥だらけの体を拭いて、まだ血の出ている傷口を縛ったりと、応急処置を手伝った。
 熱があるので心配だったが、まもなくやってきた医者が傷の手当てをし、薬を飲ませて、命に別状はないと言ったので、ほっとした。
 医者が帰るころには、あたりはすっかり暗くなっていたので、そのまま宿に帰った。レイヴに身内がいないか探すのは明日にしよう。


  ハウカダル共通暦324年先見の月9日  

 早起きして城門に行ってみたが、門は閉ざされ、見張りが厳重なので、抜け出すのはあきらめ、レイヴが住んでいた貧民窟に行ってみた。
 最初に訪れてから今までに何回か訪れて歌ったことがある。おひねりは全然期待できないし、敵意を向ける者もいるけれど、聴いてくれる人もいた。とくに子供たちは喜んでくれるので、何度か歌いに来たんだ。
 とはいえ、レイヴのことを誰に聞けばいいのかわからない。歌ったときの聴衆の中では見かけた覚えのないガラの悪そうな若者と目が合ったが、話しかけるのはためらわれた。ここの住民がみんな助け合って暮らしているというわけではないのは、なんとなくわかっている。とくにレイヴがひとりを好む性向と黒髪のせいで敵視されがちだということも。
 帰ろうかと思ったとき、一軒の家の戸が開いて、見覚えのあるおじいさんが姿を現わした。何度か歌を聴いてくれ、少し話したこともある人だ。
「おや、どうしたんだね、こんな朝っぱらから」
 レイヴの身内がいないか知りたいのだというと、おじいさんは驚きと心配の入り混じった表情になった。
「あの子に身内なんていないよ。なんでそんなことを聞くんだね? ……まさか、遺体で発見されたとかじゃ……」
「違います!」
 おじいさんが本気で心配しているようなので、事情を簡単に説明した。
「けがをして、見つけた人の家で手当てを受けているんです。で、その人に身内を知らないかと聞かれて。身内がいそうに見えなかったけど、ひょっとしたらいるかもしれないと思ったもので」
「そうか。よかった」
 おじいさんは笑顔になった。
「よかった。長いこと姿を見かけないと思ったら、戻ってきて数日でまたいなくなったから、気になってたんだ。軍隊が魔族の討伐に向かったと聞いたとたんに走って行ったから、何か危険なことに巻き込まれたんじゃないかと思ってな」
「え、あの日からですか? きのう、城門の外でけがをしているところを兵士が見つけたと聞いたのですが」
「そうか。で、その人は、レイヴがこの地区に住む親なし子だと知っているのか?」
「いいえ、それは話していません」
「ありがとうよ。黙っていてくれて。傷が治れば、あの子のことだから、その人の家を飛び出してくるだろうが、それまでは、その人の家にいたほうが安全だ。親のいない子供たちは、廃屋みたいなところに雑居しているんだ。戸締りのできるような家に住んでいるわけではないからな。ここは、あの子にとって、安全な場所とは言えないんだ。残念ながらな」
「わかりました」
 レイヴはそういう過酷な環境で生きてきたのだと、改めて感じた。
 そのあとレイヴの様子を見に行くと、まだ眠ったままだが、熱はだいぶん下がったと聞いて安心した。
 それで城門のほうに行ってみたが、やはり出ることはできなかった。


  ハウカダル共通暦324年先見の月10日  

 今日は軍隊が出立前に城壁の外に出る許可を得ようと王宮に赴いたが、時間が早すぎると言われ、陛下に拝謁することはむろん、軍の指揮官に会わせてもらうこともできなかった。そうしているうちに軍隊は出立し、どれだけ食い下がっても城門の外に出ることはかなわなかった。
 それで、再び王宮に行って城門から出る許可を取ろうとし……城門と王宮を何度か往復して、夕方近くになってレイヴの様子を見に行った。
 すると、レイヴの看病をしてくれていた兵士の奥さんがおろおろしており、レイヴが目を覚ましてすぐにどこかへ行ってしまったのだと知らされた。
 驚いて貧民窟のほうに行ってみたが見当たらない。市街地も探してみたが見つからなかった。
 まだ傷が癒えていない状態でどこに行ったのか? 街の外に出ることばかりに気を取られて、レイヴの様子を見に行くのが遅くなったことが悔やまれた。


  ハウカダル共通暦324年先見の月11日  

 城門のほうに行ってみると開いていた。魔族の残党狩りは昨日までで終了し、近隣の村に足止めされていた商人たちが入ってくる。今日は広場に市が立つ日なので、昨日で討伐が片付いたことを口々に喜んでいる。
 城門の外に出てみると、高台が設けられて、魔族たちの首がさらされていた。魔族の間諜と聞いていたが、年寄りも女性も子供もいて、危険な間諜にはとても見えなかった。おそらく、人間の目を逃れてひっそり隠れ住んでいたところを見つかり、一方的に虐殺されたのではないだろうか。
 そのなかにバルドの首がなかったのにはほっとしたが、まだ幼い女の子の首を目にした時には、痛ましさに思わず目を覆った。
 ここに首を掲げられているので全員なのか? ほかにも殺された魔族がいるのか? バルドはほんとうに無事なのか?
 幸い一昨日の夜にもその前夜にも雨が降ったので、街道のぬかるみに軍馬の足跡が残っている。軍隊が通った跡をたどるのは難しくない。
 北に向かって街道を行くあいだに何台かの荷車とすれ違った。旅人らしい荷物も持たずにひとりで歩いていれば、ふつうなら奇異な目で見られたかもしれないが、竪琴を背負っているのを見れば吟遊詩人だとわかる。吟遊詩人の身軽な一人旅は珍しくない。
 ともかく、北に向かって二刻(約三時間)ほど歩いたかと思われるころ、軍隊が街道を離れて荒れ地に入り、北西方向に向かったのがわかった。
 踏みしだかれた草などから行軍の跡をしばらくたどっていくと、前方からだれかがこちらに向かってくるのが見えた。丈の高い草の間から黒い髪が風になびくのが見え、思わず緊張する。魔族の生き残りだとすると、こちらを敵とみなすだろう。
 だが、相手が近づいてくるにつれ、レイヴだとわかった。
「レイヴ? 傷がまだ治っていないだろう? 何してるんだ、こんなところで?」
「こちらこそ聞きたい。何をしている、こんなところで?」
 冷たくて鋭い視線だった。こちらに敵意と警戒心を抱いているのは否応なくわかった。
「軍隊の跡をたどっている。戦いがあった場所を見ようと思って」
「見てどうする? 飯の種にするのか」
 一瞬、何のことを言っているのかわからなかったが、一拍置いて、吟遊詩人としての仕事のことを言っているのだと気がついた。
「歌にはするかもしれないが、飯の種にはならないな」  思わず苦笑が出る。歌にするとしたら、禁断の秘歌だ。
 今度はレイヴがけげんそうな顔をする番だった。
「魔族に対する人間の残酷さを歌にしても、人前で歌うわけにはいかない。へたをすると俺の首が飛ぶ。魔族たちと同じようにね」
「魔族に対する人間の残酷さ? あんたはそう思うんだな」
 とまどっているようなレイヴの口調に、彼が魔族に刺されて負傷したということを思い出した。
「すまない。きみは魔族に殺されかけたんだったな。それなら、俺の言っていることを変だと思っても無理ないが……」
 言いかけるのをレイヴが遮った。
「違う! 殺されかけてない!」
 おとなっぽい少年だと思っていたが、むきになって叫ぶ様子は年齢相応に子供っぽく見えた。
「クペは俺が裏切ったと思ってたけど、そのあと信じてくれた! だから、俺は殺されかけてなんかいない! なのに、人間の兵士たちはクペを殺したんだ! 魔族たちは俺を助けてくれたのに!」
 これには驚いた。あまりにも意表をつかれて、つかのまレイヴが何の話をしているのかわからなかった。
「なんだって? クペ? 魔族たちがきみを助けた? きみは殺された魔族たちの知り合いなのか?」
 思わずレイヴの肩をつかんで揺さぶった。
「その話を聞かせてくれ。きみは起こったことの貴重な証人だ」
 レイヴは驚きながらも怒りのこもった視線を向けてきた。むごいことを頼んでいるのはわかっている。もしもバルドが殺されて、そのあとに別の吟遊詩人からバルドの話をしてほしいと頼まれたら、やはり怒りを感じずにはいられなかっただろう。たとえそれが校長先生やカイ先生だったとしても。
 禁断の秘歌の継承者たる俺でさえそうなのだ。まして、吟遊詩人でもなく、まだ子供といってよい年の少年となれば無理もない。
 だが、それでも俺は彼の話を聞きたかった。
「頼む。話してくれ。あったことをなかったことにしないために」
「あったことをなかったことにしないため?」
 その言葉がレイヴの心を動かしたようだ。
 レイヴは荒れ地にあった石のひとつに腰を下ろした。俺もそのすぐ隣に腰を下ろした。
「俺は、病気になったとき、シグトゥーナを離れてこの荒れ地に身を潜めていた。そのとき魔族に見つかったんだ。魔族たちは、はじめ、口封じに俺を殺そうとしたが、子供を殺すなとかばってくれた者がいて、隠れ里に連れていって病気の手当てをしてくれた」
 皮肉な話だ。人間の社会は病気の子供が身を隠さなければならないほど冷たいのに、魔族たちは病気の治療をしてくれたのか。
「病気が治ったあとも、俺は魔族たちと暮らしていた。魔族たちは隠れ里の秘密を守るために俺を帰すわけにはいかなかったから」
 それは当然そうだろうな。
「でも、隠れ里が人間たちに見つかりそうだというので、魔族たちは、ほかの仲間を探して合流しようと、隠れ里を捨てて移動することになった。その前に、俺をシグトゥーナの近くまで送り返してくれた。俺が秘密を漏らさないと信じてくれたんだ。それからまもなく討伐隊が差し向けられ、魔族たちがたくさん殺された。彼らの出発は間に合わなかったんだ」
「生き残った者はいないのか?」
 そう訊ねてから、すぐその問いを打ち消した。
「いや、それは聞かないほうがいい。もしも生き残った者がいたとしたら、それは、俺は知らないほうがいい。知ったとしても、それについては歌に加えることができないし」
 レイヴがけげんそうに見つめるので、説明した。
「いま聞いた話を歌にして、いつかこれと見込んだ別の吟遊詩人に伝えるときには、俺は自分の命をそいつに預けることになる。だけど、どんなに信頼している相手にでも、自分以外の者の命を預けるわけにはいかない。人間でも魔族でも、いま生きているかもしれない人の行方や素性などは歌に盛り込めない。それはきみについても同じだ」
「おれについて?」
「魔族に助けられた子供がいるというのは歌にしても、それが君だとわかるような表現はいっさい入れない。こういう歌をつくったり伝えたりするときには自分の命をかける覚悟はあるけれど、きみの命をかけるわけにはいかない。自分以外の命をかけるわけにはいかない。何十年も経ってからならともかく、近年のできごとなら、名前を出せるのはすでに亡くなった人だけだ。人間でも、魔族でも」
 そう力説したのは、隠れ里とやらにバルドらしい人物がいなかったかどうか聞きたいという自分の気持ちを抑えるためでもあった。
 自分がこういう話を聞いたり、歌にしたり、人に伝えたりする人間だということを明かすことによって、俺はレイヴに自分の命を預けたわけだが、バルドの命を預けるわけにはいかない。レイヴに話したからといって、レイヴの人柄から考えても状況から考えても、バルドに危険が及ぶとは思えないが、それでも話すわけにはいかない。
 とはいえ、亡くなった魔族の中にバルドがいなかったかどうか、どうしても確かめずにはいられず、ひどいことを聞くと思いながらも、レイヴに訊ねた。
「よければ、亡くなった魔族の名前や人柄を教えてくれないか」
 にらみつける苦痛に満ちた視線にたじろぎ、問いを撤回しようとしたとき、レイヴが口を開いた。
「あったことをなかったことにしないためだな」
 そうつぶやくと、レイヴは顔を伏せ、知っている名前を挙げはじめた。
「クペ」
 最初に口にしたのは、先ほど聞いた名前だ。ぽつりとレイヴが語った説明によると、人間でいえば彼と同年代ぐらいの少年で、一度はレイヴが裏切ったと思って殺そうとしたが、そのあと信じてくれた。なのに、人間の兵士に殺されてしまった。
 クペの妹ターナ。クペがレイヴに語ったという言葉からすると、皆を案じて近くまで探しに来たレイヴに会いに行こうとして隠れ場所を抜け出し、兵士たちに見つかって殺されてしまったらしい。
 それからふたりの兄ガンザ。年の離れた兄で、屈強の戦士であり、レイヴを人間の世界に返すようにと決断したのは彼だという。
「ガンザ?」
 その名前には聞き覚えがあった。禁断の秘歌の勉強をしているときに聞いた歌の主人公のひとり。魔界軍が北のニザロース王国に侵攻してきたとき、ホルム王国の騎士として戦った魔族の名だ。
 人間の騎士ソルホグニの親友で、妹のサーニアとソルホグニの恋に理解を示し、ソルホグニが彼をかばって戦死したとき後事を託されたのに、帰国してみれば、魔族に怯える暴徒たちに両親が殺されており、妹は生死不明で、自らも出奔するしかなかった魔族の騎士。
「ガンザという名の魔族が登場する歌が伝わっている。きみが知っているガンザと同じ人物かどうかはわからないが」
 念のため素早く周囲に視線を走らせ、周囲にだれもいないのを確かめると、できるだけ低くて小さな声で、ガンザとソルホグニの友情と、サーニアとソルホグニの恋と、魔族たちの受難を歌った歌を口ずさんだ。レイヴは目を見開いてじっと聞いていた。歌が終わったあと、自分の知っているガンザと同一人物だとも別人だとも言わなかった。だが、その真剣な表情から、おそらく同一人物なのだろうと察せられた。
 しばらくの沈黙のあと、レイヴが口を開いた。
「ずいぶん昔の歌だ。ということは、その歌をつくったのはあんたじゃない。人に聴かれるとやばい歌をつくって伝えているのはあんただけじゃないんだな」
「あったことを後世に伝えようとするのは、ひとりでは無理だ。が、それについては語れない。俺以外の人の命をきみに預けるわけにはいかない」
 レイヴは頷いた。
「それはそうだ。そんなもの預けられても、俺も困る」
 そのあと俺とレイヴはシグトゥーナに戻った。レイヴは、抜け出してきた兵士の家に戻るのは拒んだが、医者に行くのは拒まなかった。
「この傷は、三日もすればかなりよくなる。空いている病床があるから泊めてやる。そのあと二日ほど雑用をして働けば、薬代はチャラにしてやろう」
 医者の示した条件をレイヴが呑んだので、俺は彼を医者に託して帰った。


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