ミディアの日記−王家の事情

ファイアーエムブレム「紋章の謎」のミディアが少女時代に日記を書いていたら……
これは4ページ目。騎士になりたいミディアは、父の部下だったリュイス隊長のもとで騎士としての試練をうけます。

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 2003年7月25日UP 


  アカネイア暦596年6月1日  2003年7月8日UP

 今日から正式に騎士見習いになった。とはいっても、男性の騎士見習いたちとは宿所も仕事も別だ。わたしの仕事は、王妃殿下……じゃなかった、王妃さまとニーナ姫さまとリリア姫さまの護衛だ。
 今まで「王妃殿下」「王女殿下」と呼んでいたのに、「王妃さま」「姫さま」と呼ぶのは妙な気分だけど、そう呼ぶようにといわれた。王妃さまがそうお望みなのだという。プライベートな場所でまで「殿下」と呼ばれるのは、堅苦しくて息がつまるということらしい。それはまあ、たしかにそうだろう。
 どうも、王妃さまや王女さまがたに女の騎士か魔道師を護衛につけたほうがいいという意見が前から出ていて、急に具体化したらしい。
 王子殿下がたには騎士や魔道師の護衛がいつもついているけれど、男の騎士や魔道師たちはよほどの緊急時でないかぎり王妃宮には近づけない。侍女たちはほとんどが騎士の娘だから、あるていどは武芸のたしなみもあるが、じゅうぶんとはいえない。それが問題になっていたようだ。
 急に具体化したのは、わたしが騎士を志願したことがきっかけになったのかどうかは、よくわからないけど、ちょうどいいということになったのは確からしい。わたしがその最初のひとりで、早い時期に、王妃宮にあとふたりほどと、側室がたや側室腹の王女さまがたにも専門の護衛をつけるという。
 わたしが騎士になることを、おとうさまが許してくれたのも、たぶん、こういう話が出たからだ。宿直のとき、男の騎士見習いたちと同じ宿舎ではなく、後宮に寝泊りするというので安心したのだろう。
 そうおとうさまに言ったら、「こっちのほうが別の意味で心配だ」と言われた。
「騎士見習いには、ふつう、護衛のような戦闘力を必要とする仕事はまわってこない。日々、修業にいそしむか、小姓として雑用仕事をするていどだ。まだ腕が未熟なのだからな。だが、おまえは侍女ではなく、いきなり護衛の仕事をするのだぞ。危険をともなう仕事だということを忘れるなよ」
 そうよね。侍女だけでは不足だというぐらいだもの。このうえなく堅固に守られているように見えるアカネイア・パレスだけど、絶対に安全ということはない。どんな事態が起こっても、王妃さまや姫さまがたを守れるように強くならなければ。
 さいわい、王妃さまたちはずっと後宮におられるわけではない。王妃さまが謁見室で陛下と同席なさって、姫さまたちが先生について勉強なさっている時間は、正規の騎士が護衛につくから、そのあいだ、わたしは騎士見習いとして武術の訓練を受けることになっている。がんばって強くなろう。


  アカネイア暦596年7月25日  2003年7月25日UP

 後宮では、ニーナ姫さまの結婚について、よくうわさになっている。ニーナ姫さまの腹違いの姉姫さまおふたりは、すでに結婚相手が決まっているから、ニーナ姫さまの結婚相手がどなたになるのかが、王宮の侍女たちにとっていちばんのうわさの種なのだ。
 アカネイアの王女さまがたにとって、結婚の対象になりうるのは、わが国の王族か貴族、または外国の王族か有力者だ。とくにニーナ姫さまは嫡出の王女殿下であられるので、結婚相手はかなり限定される。外国に嫁がれるなら、王位継承権が一位の方以外は問題外らしい。わが国の貴族なら、よほど高位の方だけ。それも、王家の血にまったく連なっていないお方は対象外だろうという。
 国王陛下は、ニーナ姫さまをかわいがっておられるので、わが国のどなたかに嫁がせたいと考えていらっしゃる。身分やご年齢からいって候補にあがっている方は十一人。そのおひとりは王太子殿下で、おふたりはやはり腹違いの兄君様と聞いて驚いた。
 聖王家では、腹違いのごきょうだいのご結婚が過去に三度ほどおこなわれているのだそうだ。ただし、それはどれも、王妃腹のお子が王女殿下だけで、妾腹の王子殿下がおられたとき、おふたりをめあわせて世継ぎになされたというケースで、やはり異例なことらしい。
 今回は、王太子殿下は先の王妃殿下のお子で、正式に立太子なさっておられ、政治的にそんな異例の結婚をする必要はない。だから、まず、兄君さまがたとのご結婚はないだろうという。有力候補は、兄君様がた以外の王族四人なのだそうだ。
 それなのに候補にあがっているのは、国王陛下が妾腹の王子がた、とくに第二王子であられるデューン王子殿下をたいへん愛しておられ、またデューン殿下とニーナ姫さまの仲がいいところから、おふたりのご結婚を望んでおられるということらしい。
 それに……。いくら日記でも、こんなことを書くのははばかられるんだけど……。デューン殿下には身分の低い恋人がいて、陛下はそれが気に入らず、ふたりを別れさせるために早く身分高い女性と結婚させたいという心積もりもあるんだそうだ。
 王太子殿下はもちろんそれに反対しておられる。もしもニーナ様がデューン殿下とご結婚なされば、デューン殿下の立場が強くなって、王太子殿下を脅かすかもしれないからだという。
 王太子殿下は、弟君たちはもちろん、ニーナ姫さまをわが国のほかの王族や貴族とも結婚させたくないらしい。政略の駒として、外国の王族に嫁がせたいのだ。有力候補と考えておられるのは、マケドニアのミシェイル王子殿下だという。ミシェイル殿下は野心家で、アカネイアへの反感が強いようだし、マケドニアはグルニアと並ぶ軍事大国なので、政略結婚によっておさえておきたいのだそうだ。
 ああっ、もう! 書いていていやになってきた。
 後宮では、毎日のようにこういう類のウワサを聞かされるんだもの。こういうことを日記に書いていると、自分もウワサ好きのひとりになったみたいだ。でも、日記にぶつけないとモヤモヤするから、あえて書く。どうせ、だれも読まないんだもの。
 どうして陛下も王太子殿下も、ニーナ姫さまのお気持ちをもっと考えてくださらないのだろう? まだ恋もしておられない幼さで結婚話が出るのがそもそもおかわいそうなのに、すでに恋人がおられる兄君様とか、わが国に反感を持っている外国の野心家の王子だとか……。あんまりだと思う。侍女たちがさかんにウワサをするのも、たんなるウワサ好きじゃなくて、姫さまのことを心配する気持ちがあるではないだろうか。
 それにしてもふしぎなのは、ニーナ姫さまの結婚相手の候補にジョルジュが入っていないことだ。ジョルジュの家はアカネイア貴族のうちでも名門中の名門で、これまでに、王家に嫁がれた方や王家から降嫁された方が何人もおられる。ジョルジュのおばあさまは先の国王陛下の姪にあたられる方だし、叔母さまは王弟殿下に嫁がれている。
 家柄からいっても王家との血縁からいっても、ジョルジュはニーナ姫さまの結婚相手候補として申し分ないと思うんだけど。
 不思議に思って、ウワサをしていた侍女たちに聞いてみたけど、みんな知らないという。ただ、何かのタブーがあって、ジョルジュは対象外らしい。
 なぜだろう? ジョルジュのおじいさまは王家の姫君とご結婚なさっているのに? 今度お休みをいただいたとき、おとうさまかおかあさまに聞いてみよう。


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