ミディアの日記-御前試合・その2

ファイアーエムブレム「紋章の謎」のミディアが少女時代に日記を書いていたら……
これは9ページ目。騎士見習いのミディアは、王妃とニーナ姫の護衛をしています。

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 2005年2月13日UP


  アカネイア暦597年4月25日

 きょうは御前試合の第一日目で、「子供の部」の予選だった。騎士の子女はまだ騎士見習いになっていない子供、それ以外は十三歳までこの「子供の部」に参加できる。去年までは男の子しか参加できなかったけど、今年から女の子も参加できるようになった。
 試合の日程は、きょうが一般の子供たちの予選と魔道師をめざしている子たちの予選で、二日目のあすがアカネイアの騎士の子供たちの予選、三日目が兵士見習いと剣士見習いの予選、四日目と五日目が騎士見習いの予選、六日目が一般人の大人の予選、七日目が兵士や剣士の予選、八日目から十日目までが騎士の予選、十一日目から十五日目はそれぞれの本試合になっている。
 はじめ、最初の一日を女子の試合にあてるっていってたけど、人数が少ないのと、女子の試合だけを一日に集めて本試合まですませてしまうよりは、部門ごとに分けて、それぞれの男子の試合の前に女子の試合をもってこようということになった。
 だから、御前試合の日数は例年通り十五日だ。とはいっても、本試合に残った人数によっては、試合の日数が延期になることもあるんだけど。
 十五日間もつづく武術大会なんて、このアカネイアの御前試合ぐらいのものだ。アカネイアはどちらかというと武術より学問や文化を重んじる風潮があって、マケドニアやグルニアやアリティアのほうが武術を重んじる風潮はずっと強いんだけど。
 でも、アカネイアはこの大陸の諸王国のなかでいちばん人口が多いし、他の国々の主君筋にあたるから、他の国から試合にやってくる人もけっこういて、参加者が多い。御前試合で優勝すれば、平民や他の国の人でも望みさえすればアカネイアの騎士になれるし、子供の部の優勝者なら騎士見習いになれるから、武術に自信のある人にとっては出世のチャンスなのだ。
 本試合の日数が増えるかもしれないのは、本試合に何人残れるかわからないからだ。
 子供の部もわたしたちも、女性は人数が少ないから一回か二回試合をして勝てば本試合に残れるので、本試合に残れる人数はわかっている。弓や魔法の試合も、対戦するのは危険なので、一列に並んで技を競いあって、各組一人ずつ本試合に出られる決まりだから、やっぱり本試合に出る人数は前もってわかる。
 でも、武術大会の大半を占める男性たちの対戦試合では、子供の部では三人、大人の場合は五人連続して勝ち抜けば本試合に残れるという決まりなので、何人本試合に残れるかわからないのだ。
 本試合は、一回戦で勝った者どうしが二回戦をする……って形式の勝ち抜き戦で、本試合に残った人数によって、何試合を同時進行するかを決めて調整するのが原則だけど、残った人数があまりにも多くて対戦表をつくるのがたいへんなときには、予選と同じ方式でまず人数が絞られる。逆に、人数が少ないので、準決勝まで残った四人が総当たり戦になった年も過去にはあった。
 そんなふうに調整しても、長引く試合だってあるし、予定通りの日数で終わらない年だって、何年かに一回は出てくるのだ。
 ともあれ、きょうの試合は予想以上におもしろかった。
 最初におこなわれた一般の女の子の試合、参加者が十二人だけで、やっぱり女の子は武術をしたがる子が少ないか、試合に出るのを親に許してもらえないんだろうな……と思って見てたんだけど、どう見てもいちばん年下の小柄な子がむちゃくちゃ強かったの。
 年齢に下限がないとはいっても、子供だと年齢の差は大きいから、あんまり小さな子は出ない。出場しているのは、一般の部だと十二歳か十三歳の子が大半で、十歳か十一歳の子が少しといったところなんだけど、そのエストって子はどう見ても八つか九つぐらいに見えた。
 でも、その子はすごくすばしこくて、あっという間に相手の剣を叩き落としてた。六組の試合が同時に行われたんだけど、最初に終わったのはその子の試合だった。
 本試合の子供の一般・女子の部で優勝するの、この子じゃないかな?
 そう思ってたら、六組の試合が終わって、それぞれの試合の勝者が本試合に出場できると宣言されたとき、ふいに上空からペガサスナイトが二騎現われて、試合場に降り立った。
 地上に降り立つと、ペガサスの乗り手は二人とも少女で、ペガサスナイトじゃなくてその見習いだとわかった。年上の人はわたしとあまり違わない年齢に見えたし、もうひとりは十歳ぐらいの子供だったから。
 年上のほうの少女が、ずいぶん堂々とした口調で、「マケドニアの騎士見習いパオラと申します」と名乗り、突然の来訪を審判員と陛下に詫びた。
「妹がこちらの御前試合に出場するという手紙を残していなくなりましたので連れ戻しにまいりました。この子はいずれわが国の白騎士団の騎士見習いとなる身。まだ入隊していないとはいえ、勝手は許されません」
 マケドニアにはずいぶん以前から女性のペガサスナイトがいるのは知ってたし、ずっとそれをうらやましいとも思ってたけど、実際に見たのは初めてだ。
「それじゃあ、カチュアといっしょに入隊させてくれればいいのに。わたしだけ子供扱いするから、実力を証明しようとしたのよ」
 エストって子が姉に食い下がり、「お黙り!」と叱られた。
「ごく小さなころから剣を習ってきたあなたが、一般の子に混じって試合をするのはずるいでしょう?」
 そういう見方もあったのかと、ちょっと驚いた。
 このパオラって人の感覚では、年上の子と試合をしても、エストが勝つのはあたりまえなのだ。たぶん、それが白騎士団の騎士見習いになる女の子たちの実力なのだ。
「じゃあ、騎士見習いの人たちといっしょに試合をできるよう、これからお願いしてみるわ」
 エストは食い下がったが、「勝手なことをすると白騎士団には入れないわよ」と叱られ、しぶしぶ姉たちに従って帰っていった。
 これで子供の一般・女子の部の本試合出場者は五人になった。エストと対戦して負けた子が、相手が騎士の子だったことに文句を言うかと思ったけど、言わなかった。
 そのあとの子供の一般・男子の部は、何百人も参加者がいたけど、二十組ほどの試合が同時進行でおこなわれ、昼休みを途中ではさんで、わりとふつうに終わった。本試合に残れたのは四十人ほどだった。
 夕方になって、最後の魔道師をめざしている子たちの試合になったんだけど、今度もおもしろいハプニングがあった。
 魔法には男女のハンディがないから、男の子も女の子もいっしょに試合をしたんだけど、魔法の勉強をする女の子はたいていシスターをめざすから、参加しているのはほとんどが男の子ばかりだった。
 だけど、そのなかにひとりだけ女の子が混ざっていて、どう見てもまだ六つか七つぐらいの小さな子なのにずば抜けて強かったのだ。
 そうしたら、貴賓席にいらしたミロア司祭さまが、なにごとか叫んで会場に乱入した。ふだん落ち着いてらっしゃる温厚な方だったから、びっくりした。
 その女の子、ミロア司祭さまのお嬢さまで、司祭さまに無断で出場してたってわかった。
 そういえば、ミロア司祭さまにリンダさまというお嬢さまがいて、魔法の才能がすごくありそうだって、ジョルジュから聞いたことがあったっけ。こんなにすごかったのね。魔法って、やっぱり血筋なんだろうか。
 陛下は「よいではないか」と司祭さまをとりなそうとなさったけど、司祭さまは頑として拒んで、リンダさまを連れ戻してしまわれた。
 なんだかきょうの試合は、小さな女の子二人が話題をさらったって感じで、おもしろかった。


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