ミディアの日記−御前試合・その3

ファイアーエムブレム「紋章の謎」のミディアが少女時代に日記を書いていたら……
これは10ページ目。騎士見習いのミディアは、王妃とニーナ姫の護衛をしています。

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 2005年4月5日UP


  アカネイア暦597年4月29日

 きょうは騎士見習いの予選二日目だった。わたしの出場する日だ。
 女の騎士見習いは人数が少ないから、一試合して勝てば本試合に残れる。わたしは勝てたので、本試合に残れることになった。
 うれしいんだけど、ちょっともの足りない。こんなこと思うのって、対戦相手のエルザに悪いなとは思うんだけど。きょう試合に負けて、本試合に出られない人みんなに悪いなとも思うんだけど。
 でも、男の騎士見習いみたいに、五人勝ち抜いて本試合に残りたかったな。
 そりゃあ、それだと途中で負けてしまった可能性は高いけど。男の騎士見習いで本試合に残った人って、やっぱりレベル高いもの。かなり強くて、しかも体力もなければ、五人も勝ち抜くのは難しい。
 でも、負けてもいいから、男の騎士見習いたちと同じ条件でやりたかった。
 そりゃあ、女の騎士見習いは少ないのだから、男女別で試合をするかぎり、無理だとはわかってるんだけど。
 そう思うのは、男の騎士見習い何人かがしゃべっているのを聞いてしまったからかもしれない。
「女はいいよな。一回勝つだけで、本試合に残れるんだから」
 なんだかすごく悔しい。勝っても「女だから残れた」といわれるぐらいなら、予選で負けたっていいから、同じ条件でやりたかった。
 男女混合でもよかったんだ、べつに。戦場では、男も女もないのだから。


  アカネイア暦597年5月1日

 きょうは兵士と剣士の予選。ナバールとアストリアが出る日だ。
 いいなあ、ふたりとも。「剣士見習い」じゃなくて、「剣士」で出られるんだもの。
 ふたりの試合は、それぞれ別の理由でハラハラしながら観ていた。
 アストリアの試合のほうが先で、彼の場合は、勝てるかどうか心配で観ていた。剣士の試合も五人勝ち抜いたら本試合に残れる決まりなんだけど、五人勝ち抜くのってかなり難しいみたいだから。
 はじめの三試合ぐらいは強いと思った人でも、四試合目とか五試合目になると疲れがひどくなってくるみたいだし、それで体力がつづかずに負けてしまう人だって多い。
 ましてアストリアは、毎回苦戦してきわどいところで勝つからハラハラしたので、せいいっぱい応援した。
 四試合目あたりから疲れが出ているのが観ていてわかったから、予選通過は無理かも……と思ったけど、五人勝ち抜いて、みごと予選を通過した。思ってたより強いし、がんばりやなんだな、この人。友だちだからとてもうれしかった。
 ナバールの試合のほうは、アストリアのような心配はしていなかったけど、別のことでハラハラした。相手をケガさせたり、死なせてしまったりしないか、気が気じゃなかったのだ。
 いや、よく考えたら、予選でも、たまたま勇者部隊の猛者とあたる……なんてことだってありうるんだから、そうなったら、いくらナバールでも苦戦しただろうと思うけど……。
 ナバールの試合を観ているときには、彼が負けるかもしれないとか、苦戦するとかは想像できなかった。だって、やたらに早く決着が着くんだもの。
 予選だから、いくつもの試合が同時進行で行われるんだけど、同時進行で試合をしている人たちが気の毒になるほど、みんなナバールに注目していた。とくに女性たちの熱狂ぶりはすさまじかった。
 だから、ナバールが負けるかもしれないという心配は全然湧いてこなくて、声援を送るよりも、「どうかナバールがだれも殺したりしませんように」と、ずっと祈ってた。
 そう祈らずにはいられないほど、ときおり突発的に出る「必殺の一撃」はちょっと恐かった。剣をへし折られた人とか、胴鎧にヒビが入った人とかもいて、あれが当たったら、いくら刃をつぶしている剣でも無事ではすまないという気がする。
 幸い、対戦相手は五人とも無事だった。五人目が倒れて動かなくなったのでひやひやしたけど、気を失っただけだったらしい。
 全部の試合が終わってから、ふたりにお祝いを言おうと思って、試合場に降りていったら、ナバールはおおぜいの人たちに取り囲まれていて、近づきにくい状態になってしまっていた。
 その輪の外にジョルジュとアストリアがいたので、アストリアにお祝いを言った。彼も勝ち抜いたのに注目されていないのは、ちょっと気の毒な気もする。
「ナバールがだれかに大ケガをさせないか、ひやひやしてたわ」
 そう言ったら、ジョルジュが同感だと笑った。
「でも、無事に試合が終わってみれば、あの戦いっぷりはすごいわよね。オグマの試合を思い出したわ」
「それは、ナバールには言わないほうがいいぞ」
「なぜ?」
「あのようすをよく見てみればわかる」
 ジョルジュに言われて、ナバールのほうをふり向くと、彼はすごくいやそうな顔をしている。取り巻いている人たちは、口々に誉めそやしているだけなんだけど。
「ときどきオグマの名を出しているやつがいるだろ?」
 ジョルジュにいわれてみれば、たしかに、みんなの誉め言葉のなかに、オグマの名がときどきのぼる。「オグマの再来のようだ」とか、「オグマのほかにあんたほど強いやつは見たことがない」とか。
 同感なので、いままで気に留めなかったけど……。
「どうやら、自分より強いと思われているらしいやつがいるのが気に食わないのさ。会ったこともないオグマに対抗意識を燃やしているんだ」
 あきれたけど、ナバールらしいといえば、いかにもナバールらしい。


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