「カメのほうが好き」とあなたは答えました。
「おお、それなら、ぴったりの男がいる」
占いじいさんはうれしそうに答えました。
「のろい。かたい。地道な努力家。まさにカメのような男がいるぞ」
その言葉によくあてはまる人をあなたは知っています。シグルド軍の一員として戦い、バーハラに凱旋したときにそのなかにいた人です。でも、そのあとシグルド軍は全滅し、その人も死んでしまったはず……。
そう思ってついていくと、占いじいさんはどんどん町はずれのほうにいき、一軒の農家に入っていきます。はたして、そこにすわっていたのはアーダンでした。
「やあ、じいさん」とアーダンが言いました。
「あんた、占い屋なんだろ? だったら占ってくれよ。みんなはどうなったんだ? おれみたいに生き残ったやつはいないのか? セリスさまやシャナン王子は無事なんだよな。エスリンさまのお子さまがたも」
「いいかげんで戦いのことは忘れなさい」
占いじいさんはやさしく言いました。
「生き残った者もいれば、石にされて救出を待っている者もいる。だが、その者らを助け出せるのは、おまえさんではない。おまえさんの足では何もできまい」
アーダンはくやしそうに自分の足を見ました。
「おケガなさったのですか?」
あなたがたずねると、アーダンが答えます。
「歩いたり、畑仕事ができるぐらいには回復したが、どうしても足を引きずってしまう。もともと鈍足だったのに、もっとのろくなってしまった。……たしかに、これでは、だれかがシグルドさまの遺志を受け継いで決起したとしても、役には立たない」
「そうじゃろう。もう、戦いは次の世代にまかせて、せめて余生をしあわせに生き、自分も次の世代を残すことを考えてはどうかな?」
「え?」
「嫁さんをもらうんじゃよ。この娘さんではどうかな?」
アーダンは驚いてあなたのほうを向き、まっ赤になりました。どうやらひとめぼれしてしまったようです。
「お、おれ……いや、わたしはいままで女性とつきあったことがなくて……。ほんとにいいんですか」
「はい」と答える
辞退する