暗い近未来人の日記−安藤さんの話・あとがき

 これは「暗い近未来人の日記−安藤さんの話」のあとがきです。
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こちらを先にお読みになりますと、ネタバレしますので。

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2005年12月3日UP

 ブログにも書きましたが、「安藤さんの日記」、読み返してみると、やっぱりミステリーじゃありませんね。トリックとか謎解きとか、ほとんど出てきませんもの。
 いや、ミステリーのつもりはなかったから、べつにいいんですけど。
 もともとこの話、はじめは、主人公は深く関わらなくて、就職活動しているあいだに、安藤さんの死とか、岡野くんの死とかがポツポツと起こって……というつもりだったんです。ふつうの女子大生がこんな事件を解決するのはまず無理ですしね。
 でも、それじゃ、わけのわからない話になっておもしろくないし、もっとあとの話で再登場させるつもりだった一ノ瀬涼子を出せば、主人公が事件の全貌を知ることになっても不自然じゃないと気づきまして、予定を変更しました。
 一ノ瀬涼子は、名前はこの話で再登場させる段になってあわてて決めたんですけど、わりと強力なテレパスってのと、兄または親戚が刑事ってのと、のちに再登場するってのは、初登場のときに名前なしでちょこっと登場したときから決めてたんです。
 テレパスを登場させるってところが、そもそもミステリーとしては掟破りですね。ははは……(笑ってごまかす)。
 ま、ともあれ、主人公が事件にどっぷり関わることにさせた結果、はじめの予定より長くなりました。

 この話、ひやひやしたのがネーミングです。じつは、わたし、日本を舞台にした話をあまり書いていない理由の一つがネーミングなんですよ。
 悪役とかいやな性格設定のキャラと同姓同名の人がいるかもしれませんからね。
 で、狸原なんて、実際にいなさそうな名前をつけたりしましたが、まさか、いませんよねえ。よく考えたら、珍姓にして、同じ姓の人がいたら、ありふれた姓の悪役よりまずいんだけど……。いないと信じよう。
 いや、はじめ「腹黒」のもじりで「黒原」にしようかとも思ったんですが、それだとなんだかたくさんいそうな姓だから、もしも読者の方に「黒原さん」がおられたら、気を悪くなさるかもしれませんし……。
 以前にどっかで、刑事ドラマとかで「黒」のつく名前の悪役が多いので、「黒」のつく人はいやがってるって、読んだことがありましたし……。(そりゃそうよね。わたしが「黒」のつく名前でも、やっぱりいやだと思うでしょうよ)
 この点では、異世界ファンタジーは気が楽なんですよね。「読者にブーリスさんなんて名前の人はいなだろうな」とか、「ザファイラ帝国なんて国はないだろうな」なんて心配する必要はありませんもの。

 悪役の名前以上に困ったのが、会社名と商品名です。「DDドリンク」なんて会社、ないよなあ。ないと信じよう。
 商品名は、迷って、結局出しませんでした。いや、だって、商品名で、「まさかこんな名前はつけないよなあ」ってネーミングにするのは不自然だし。「ドリンク剤」ですませちゃっているのはそのためです。
 ラスト近くになってようやく名前の出た毒物「モンルクシムS」のネーミングは、「くるしむもん」の文字を組み替えて、サドの「S」をつけただけです。これなら、よもや同じ名前の薬やドリンクが存在する心配はまずないだろうと思いまして。
 でも、毒物の名前ならともかく、商品名にこういうのは変ですからね。

 で、もう一つのひやひやはというと……。
 この話、黒幕が政府または政治家という設定は最初からあったんですけど、連載のとちゅうで、ネットのニュースを読んでたら、「年金の一部が政府高官の豪華なマンションに流用されていて……」(うろ覚えなので、ちょっと違うかもしれません)というような記事があるじゃないですか〜。
 「完結する前に、ほんとにこういう事件が起こったらどうしよう〜〜」と思いました。実話になっちゃったら、実話ネタみたいで、もう話にできないし。
 いや、小説にして発表してから実際に起こったら、もっと恐いですけどね〜。
 まさか、でも、いくら政治家の腐敗だの、高級官僚の腐敗だのといっても、ここまではやらんよねえ。やらんと信じよう……。

 で、活躍したばかりに左遷された関口刑事たちはどうしたのかって。そりゃあ、彼らの未来は、やはりシティハンターですねー……なんてウソです。だいぶん先になると思いますが、彼らは(少なくとも関口刑事は)再登場します。

 あと、読み返して気がつきました。安藤さんがモンルクシムSではなくて麻薬で殺害された理由、小説中に書いていませんね。いちおう、理由はあるんです。犯人側としては、モンルクシムSを使ったら、殺人とばれなくても、「過労死」または「メンタル過労死」を疑われる。社員ですからね。だから、まずいんです。
 でも、説明抜きだと、「こんな毒薬があるなら、なんでこれを使わなかったのだろう?」と疑問に感じますよねえ。ここが一人称のつらいところで、主人公にわからないことは話のなかに書けない……。
 うーん、同人誌にするときには、なんとか放りこみます。
 ちなみに、この麻薬、まったく架空の薬物ですので、念のため。この麻薬も、いずれのちの話で再登場するでしょう。たぶんね。

 「暗い近未来人の日記」は、このあと、「就職決定」「アパート探し」「新入社員」「タイム・カプセル・サイト」「ライフ・デバイド」「明るい未来のネット事情」「会社の幽霊」「トトカッパ王国騒動記」などを予定しています。(こうして書き出してみるとけっこうたくさんありますね。書ききれるだろーか?)
 「就職決定」〜「新入社員」のあとはどういう順番になるかわかりません。それぞれ仮題なので、変わるかもしれませんし、これ以外の話がはさみこまれる可能性も大です。
 「会社の幽霊」(ホラーっぽい話)と「トトカッパ王国騒動記」(冒険物っぽい話)のみ、それぞれで1つの物語となるストーリー性のある話で、あとは小エピソードの連続になります。長くなるのは「トトカッパ王国騒動記」だけでしょう、たぶん。
 「就職決定」と「アパート探し」は、途中に長い1日がはさまることもないだろうと思われますので、試験的に、ブログに連載して、まとまったら本館(このサイトのことです)に転載するという方法をとろうと思っています。

 なお、「安藤さんの話」は、話の性格上、ラストのページで1年ほどあとまで走ってしまいましたが、次回の「就職決定」では、主人公が大学4年の冬の時点にまた戻ります。


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